頂き物
□私の為に争わないでなんてベタで言いたくないけど
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課題も済んで久々に気楽な休日。私はデパートに来ていた。……一人で出掛けた筈なんだけど…。
「全く聖川はレディのこと全然分かってないね」
「なんだと…?神宮寺、今の発言を取り消せ」
『……』
何か変なのがいつの間にか2人ついて来てた。ああ、どうしよう凄くこの二人うるさい。うるさ過ぎて帰りたくなってきた。これが幼馴染みなんて死ねるレベルだ。ほら小さい子にガン見されてますけど、お前達御曹司だろ!
『……うるさい』
「す…すまない。しかし校外を出歩くとなるなら俺を誘え、お前一人で居たら拐われるぞ」
『私は王家か何かの姫か』
「俺の姫だ」
『真斗君が真面目にその台詞言うとギャグじゃなくなるから止めて!』
クサイ台詞をよくもまぁ…。ああ、頭痛くなってきた。
「俺だったら尾行なんてしないでレディをデートに誘うけど?」
「尾行ではない!危険な魔の手から愛莉を守ろうとだな…」
うわ、学校から尾行されてたのか。尾行する真斗君を見つけて神宮寺レンも…という流れが妥当だろう。ていうか立派なストーキングだよね。過保護過ぎる。
「レディは買い物かい?」
それも知らずについて来たのか。いや、教えてと言われても教えないだろうけど。
『別に。暇だから外に出ただけ、お腹空いたしどっかでご飯でも食べるつもりだけど』
「じゃあ俺がご馳走してあげる。近くに美味しいレストランがあるんだ、最高級の食材を取り揃えてるからきっと気に入るよ」
「!…いや、神宮寺は放っておいて俺と食事を共にしよう。じいと時々行く寿司屋があって、味には自信がある」
キッと睨み合い、口論を始めた2人。昔は仲良くて2人とも可愛かったのにどうして今はこう…。
『ああもううるさい!』
私が怒鳴ればビックリする程ぴたりと喧嘩を止めた。が、これ以上昼食だけでガヤガヤと騒がれたら堪ったもんじゃない。ていうか高級な場所でご飯とか緊張して箸が進まないのは目に見えてる。……庶民で何が悪い。
『私がご飯奢るから昼食場所は私が決める!意見反論認めない!以上!』
くるりと進行方向を変えれば2人を置き去りにしたままスタスタと歩き出した。すぐに追いかけてくる2つの足音が聞こえる辺り、ついて来てるのだろう。
──‥
「………愛莉」
「ここはどこだい?」
ガヤガヤと賑わう店内、案内されたまま席に座った後にキョトンとした2人。
『ファミリーレストラン、通称ファミレス』
少し距離を置いて同じソファーに座る2人にメニューを渡し、ふふんと得意気に笑った。…普段の生活からだと、多分こういう庶民的食事場所に来ないだろう。
「ふぁみ…れす…?家族のレストラン、か…」
愛莉と家族…とか何とか言いながら頬を赤らめた真斗君。何を考えてるか分かったのであえてスルーを決め込んだ。
「ご注文お決まりですか?」
『……コレと、コレとコレとコレ、あとドリンクバー3つお願いします』
「かしこまりました」
オーダーを取りに来た男性店員の後ろ姿を何となくぼんやり見つめる。飲食店で金髪って…でも女性客は嬉しいんだろな、世間一般でいうイケメンの部類だろうし。
「あ…あのような男を好むのか、愛莉」
『は?』
「フン、だったら俺の方がイメージ近いんじゃない?残念だったな聖川」
「清く美しい愛莉に神宮寺のような軟派な奴は似合わん!」
「負け犬の遠吠えか?」
「何…!」
『……』
また始まってしまった。
『喧嘩するなら帰れ』
私が言い放った途端、ピシャッと2人の空気が凍った。
「け、喧嘩なんてしていない。な…なぁ、神宮寺」
「勿論さ、レディに相応しい男性像を聖川と話し合っていただけだよ」
『…』
うわぁ、態度コロッと変えやがった。分かりやす過ぎだけど本当に大丈夫かこの御曹司たち。
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