英国物語ルキア【完結】

□リクエストステージ「紋章」
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「どうよ、彼女の1人ぐらいできねぇのか」

お決まりな事を聞かれてますます一護は不機嫌になる。

「アンタまでそんな事言うのかよ。そんなヒマねぇし、職場恋愛もねぇよ」

一瞬記憶をよぎった昨夜の出来事に、忘れていたはずの苛立ちが沸き起こる。

「あってたまるか」

過剰に腹を立てる一護に一心はニヤリと口元を歪める。

(こいつぁ、なんかあったな)

それは父親の勘などという上等なものではなく、ただ単に一護の反応がいつもとは判り易く違うだけ。

帰宅のたびにからかい半分に聞いているが、今までこんなに真に受けて不機嫌を露わにしたことはなかった。

「なんだよ、可愛い子はいねぇのか」

好奇心を堪えきれない一心は加減に注意しながらつついてみる。

「別に」

「春だろ?新しい使用人の採用とかないのか」

「だから職場恋愛とかありえねぇっつってんだろ。…まぁ、生意気な新入りが1人入ったけど」

その時よりいっそう一護の眉間に皺が寄ったことを一心は見逃さない。

「ほー!どんな子だ!可愛いか?名前は?」

「なんでもいいだろうがうぜぇな!それに全っ然可愛くねぇし!」

言い切ってから考えるように少し視線を泳がせ「…いや可愛いっちゃ可愛いけど」といいなおす。

「デキ悪いし、口悪いし、手ぇかかるし…。第三の妹みたいなもんかな」

だからそんなんじゃねぇから、と、立ち上がりリビングを出て行く一護を一心は満面の笑みで見送る。

(…無自覚だ!)

それはまさに父親の洞察力。僅かな情報と一護の性格を掛け合わせてほぼ正解を導きだしていた。

(くくく…これは面白い…ぜひその可愛い新入りとやらを拝みたいもんだなぁ…ふふふ)

俄然テンションの上がった父親はスキップもどきで診療所へと向かい、途中の段差につまづいて派手に転んでいた。




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