英国物語ルキア【完結】

□リクエストステージ「乱章」
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「…はぁ?…知るかよ、そんなもん。…けど、まぁ…そうなんじゃねぇか?じゃねぇとあそこまで尽くせねぇだろ。…それに奥様と2人でいるときのデレた顔見てるとなぁ…」

サムいわ、と言いながらルキアのぶんの洗濯物にも手をつける。

「…だったら…檜佐木さんは、叶わぬ恋に苦しんでいるのだな…」

「苦しんでるようには見えねぇけどな」

「な、何故だ!叶わぬ想いを抱えて、でも想い人が目の前にいて、…相手はそれを知らなくて…、つらくないはずがない!」

「そうとは限らねぇだろ」

「…え?」

「少なくとも奥様はわかってる。檜佐木さんが自分に心酔してる事をわかってる。それに…恋とか愛とか…そういうのとは違う気がすんだよな、あの人らの場合」

「…どう、違うと?」

「そうだなぁ…。女王様と下僕?」

「…そのままではないか…」

「…うるせぇな…じゃあ神と信者だ」

崇拝し祈りを欠かさない事に幸福を覚える忠僕。

「全く恋愛感情がないってわけでもないだろうけど。檜佐木さんも男だし。ただ、どうこうしたいっていう欲求は感じねぇんだよな」

そんな問答をしている間に、ルキアが洗うはずだった洗濯物も一護の手によってみるみる洗いあがっていく。

「…ずっと近くに居たいって、ホントにそれだけなんだろうな、あの人は」

俺には真似できねぇわ、と、ルキアの握り締めていた最後の一枚のリネンを掴む。

「…一護は?」

「は?」

リネンを握ったまま離さないルキアに一護は眉を寄せる。

(まともに答えてもらえないかもしれないけど、)

でも

ききたい。

今を逃したら、いつ聞けばいいかわからないから。

「一護は、叶わない恋をしたら、どうする?」

優しく見守り続ける?

それとも。

「…だから、檜佐木さんの真似はできねぇって」

軽くあしらわれるかと思っていたルキアは、取り合ってくれた事に少し驚く。

目を丸くするルキアを見た一護は気まずそうに視線を泳がせると、強引にルキアの手の中の布を奪い取り、籠に被せて持ち上げた。

「…俺は…多分、好きになった女なら全部欲しくなるから、何が何でも叶えようとして悪あがきするんじゃねぇかな」

背中を向けたままそう言うと、籠を抱えて歩き出す。

(…何を真面目に答えてんだ、俺は)

歩きながら眉を寄せる。

別に誰かにそんなに焦がれたことなんかないのに。

本気の恋なんか知らないのに。

(そんな予定もねぇし)

なのに何故か言ってしまった。

きっとそうなると思ってしまった。

まるで既にそれを知っているように。

(暑さにヤられたかな)

照りつける太陽を見上げてため息をひとつ。

ちらりと振り返ると、まだ目を丸くして突っ立っているルキアの顔が真っ赤。

それを見た一護は急に恥ずかしくなり「やっぱ今のなし!」と叫んで駆け出した。




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