英国物語ルキア【完結】
□捩章(前編)
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一番古い記憶は、飴玉をくれた知らない男。
手を引かれて行った先で何が起こったかはもうよく覚えていない。
ただ物心ついた頃には、自分の身体は食費になると知っていた。
「よお坊主。お前中々評判いいらしいじゃねぇか」
ある日突然現れた図体のでかい男が、貧民街の路地裏でその日暮らしを送っていた水色に招待状を渡す。
封筒にはどこかの貴族の刻印があった。
「どうせ身体売るなら、どーんと稼ぎてぇだろ?」
胡散臭い男の口車に水色は無言で立ち上がった。
その招待状を開けばきっと自分は戻ってこられないとわかりながら。
16歳の水色がその時求めていたものは、豊かな生活でもあたたかい家庭でもなく、何よりも、自分にふさわしい『終焉』だった。
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