英国物語ルキア【完結】
□燃章
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(そんなつもりじゃなかったんだ。
ただ、ルキアには幸せになって欲しいと思ったんだ。
子供だった俺には、公爵っていう階級が、どれほど遠いものなのか、まるでわかってなくて)
「え?朽木公爵の家に行きたい?」
「ああ、いいだろ?アイツもいい加減慣れた頃だと思って。頼むよ浮竹院長、場所教えてくれるだけでいいからよ」
「うーん、そうだなぁ…子供だけで行くのはちょっとなぁ…」
「なんだよ、俺もう13だぜ?子供じゃねぇよ!」
「ははは、そうだな。時間がとれるか聞いておくよ」
「なんだそれ、ツレに会うのに大層だな」
「まぁ、色々大人の事情ってやつさ」
「だから子供扱いすんじゃねぇよ!」
「ははは、すまんすまん」
呑気な浮竹の態度に業を煮やした恋次はこっそりと住所を調べてその場所へと向かった。
(貴族なんて、茶ぁ飲む以外にすることなんざねぇだろうしな)
きっと綺麗なドレスを着せられて、ヒマを持て余しているだろう。忍びこんでちょっとからかってやるだけだ。
そんな軽い気持ちで。
しかし、浮竹の職務室から盗み出した朽木家の住所にたどり着いた恋次は呆然と立ちすくむ。
そこに聳え立つ屋敷は冗談のように大きくて、目の前の重々しい門は、自分と幼馴染のの世界をぴしゃりと遮断していた。
高い塀に囲まれた屋敷には子供が忍び込める隙などなく、面会を求めても相手にもされなかった。
阿散井恋次は、やっと理解した。
ルキアはもう、手の届かないところまで昇っていってしまったのだと。
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