変態ナッポーVS変態眼鏡の場合
「クッフフフ…王子様だかなんだか知りませんが君みたいな只の眼鏡にこの僕が負けるはずないでしょう」
「自分何言うとるん?お前みたいな変な髪型した奴に言われたないわ」
「髪型なら君の方が変でしょう、寝起きですかそれ?」
「アホか、このナチュラルくせ毛ヘアーの良さが分からんなんてセンス最っ悪やなー」
「ハンッ!そんな丸眼鏡かけてる君にだけは言われたくありませんね」
…あたしの目の前で睨み合う二人。
変態ナッポーこと六道骸と
変態眼鏡こと忍足侑士。
ついさっき、たまたま買い物に出掛けた帰り道で、言い合っている二人を見かけた。関わりたくなかったあたしは足早にその場を離れようとした…んだけど。
…二人に見付かりこの状態だ。
何で揉めてるのかなんて知らない。寧ろ知りたくもない。
二人は小学生みたいな言い争いを続けている。
「伊達眼鏡!」
「稲妻パイナップル!」
「キモエロボイス!」
「制服フェチ!」
「ロリコン!」
「それはお前もやろ!」
「「くっ…!」」
…何であたしはこんな争いに巻き込まれているんだろう。
周囲を歩く人はなるべく関わらないようにチラチラこっちを見ながら歩いていく。そしてあたしに向けられる哀れんだ視線。
相変わらず言い合いを続ける二人を見て決めた。
「帰ります、わたし」
その言葉を聞いた二人は一緒に振り向いた。シンクロすんな変態コンビ。
「ちょ…待ってや!」
「そうです、君に判定してもらおうと思って呼び止めたんですから!」
「判定?」
あたしの言葉に頷くと二人は眼をキラキラさせながら口を開いた。
「君はメイド萌えですよね?」
「いや妹萌えやろ?」
「……は?」
メイドに妹…
聞き間違えかと思ったけど二人の表情からして違うらしい。
無駄にキラキラした瞳で見つめてくる骸と侑士。いや、寧ろギラギラ。
「メイドの良さが分からないとは…あの絶対領域!優しい言葉!そして何と言っても御主人様…!妹は御主人様と呼んでくれますか!?くれませんよね!?」
「何言うとんねん!メイドやってお兄ちゃんとは呼んでくれへんやろ!?妹ならいつでも一緒やしツンデレオプションも可や!あの初々しさと言ったらたまらんやろ!」
「…」
白熱する戦いを尻目にあたしは静かにその場を去った。
途中で走っていくお巡りさんと擦れ違ったけど、見なかったことにした。
(メイド!)
(妹!)
(…君達、ちょっといいかな?)