ゆらのと

□第二部 七、
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「つまり、罠だと?」
「俺の勘にしかすぎないが」
そう桂が告げると、皆、考えこむような表情になった。
だから、桂は続ける。
「偶然うまく空いたような隙に突入してみれば、そこに真選組の奴らが武器をかまえて待っている、そんな気がしてならない」
真選組には抜けたところがある。
けれども、あなどれない。
それどころか、桂は敵ながら彼らの優秀さを認めている。
たまたま警護に隙ができるにしても、それに合わせて計画を練ることができるほど早い段階に、なぜ、外部に情報がもれたのか。
この話は、胡散臭い。
「ですが、ただの勘で罠かもしれないとおそれて計画に参加しないのは、臆病ではないでしょうか」
攘夷党の中では一番若い志士が言った。
「おい、桂さんの勘をただの勘だなどと言うな。おまえとは経験が違うんだぞ」
その隣にいる党員がたしなめた。
桂は彼らを見て、ふたたび口を開く。
「いや、いい。たしかに、ただの勘にしかすぎんのだからな」
「桂さん」
「ただし、臆病者だと言われるのをおそれて、あやうい計画に参加するほうが臆病だと、俺は思う」
さらに、桂は言う。
「命はひとつしかない。だから、それを賭けるところを間違ってはならないんだ」
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