ゆらのと

□第二部 六、
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「銀さん、もしかして風邪ひいたんですか」
「あー、違ェよ。ほら、アレだ、花粉症だ」
「この時期に花粉は飛んでませんよ」
「……まァ、アレだ、ちょっと寒いだけだ」
つかのま返事に窮したが、どうにか言い返せた、
すると。
「たしかに、寒いですね」
そう言い、新八は室内を見渡した。
爆破されて半壊状態なので、風通しがいい。良すぎるぐらいだ。
今日は三人で万事屋の修理をしている。
「……それにしても大丈夫でしょうか」
「ああ?」
「こんな状態で、仕事の依頼、くるんでしょうか」
修理とかでお金がかかっちゃうのに、と新八は付け足した。
たしかにそのとおりだ。
こんな状態では仕事の依頼はしづらいだろう。営業しているかどうかもわからないのではないか。
しかし。
「なに言ってんだ、くるに決まってんだろ、なにしろ、俺ァ、日頃の行いがいいんだからなァ」
まったく気にしていない様子を装った。
「銀ちゃんの日頃の行い、良くないアル」
「銀さんの日頃の行いがいいとするなら、ほとんどの人の日頃の行いがいいということになるんじゃないですか」
神楽と新八が口々に言った。
その直後。
「ごめんください」
玄関から、訪れを告げる女の声が聞こえてきた。
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