ゆらのと

□第二部 五、
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もう少し進むと、鳥居がある。
その鳥居をくぐってこちらのほうにやってくる人の数は多い。
しかし、それでも、やはり元日と比べると少ない。
元日に新八や神楽とこの神社に初詣にきたときのことを思い出した。
まるで芋の子を洗うような状態だった。
しかし、桂にとってはこれが今年の初詣であるらしい。
これまで、攘夷活動を支援する裕福な商人への挨拶まわりなどで忙しかったそうだ。
「……そういやさァ、さっき、なに祈ってたんだ、おまえ」
神妙な面持ちで手を合わせていた桂の横顔を思い出し、なんとなく聞いてみた。
桂は答える。
「日本の夜明けに決まっている」
色気のまったくない返事だった。
まァそりゃそーだろーね、と銀時が思っていると、今度は桂が聞いてくる。
「おまえはなにを祈ってたんだ」
「あー、そうだな、天から金が降ってきますように、ってな」
「天から金が降ってくるわけがないだろうが、バカ者」
「いや、そりゃわからねェ、気前のいいヤツが高いところからパーッとまいてくれるかもしれねーぞ」
もちろん冗談だ。
本当のことを、軽く付け足すことにする。
「それと、まァ、家内安全だ」
「それはおまえにとってはなかなか難しいことかもしれんな。普通に道を歩いているだけで、命の危険にさらされるような事件に、よく巻きこまれているようだからな」
「テメーに言われたかねェ」
言い返し、桂のほうを見た。
桂はまえを向いていて、こちらを見ていない。
その頬には笑みが浮かんでいる。
穏やかな笑みだ。
つい、見とれた。
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