ゆらのと

□第一部 六、
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「……なァ」
銀時が沈黙を破った。
「これからどーすんだ」
先のことを問われた。
だから、答える。
「しばらく様子を見る」
「それで、状況によっては戦いをやめんのか」
「戦いをやめる?」
「ああ、場合によっては、普通の暮らしにもどるのかってことだ」
そんなことを聞かれるとは思ってもみなくて、一瞬、戸惑った。
「まさか、それはない」
「なんでまさかなんだ」
「俺は敗軍の将だ。責任をとらねばならん」
望んでなったわけではなく、いつのまにか一軍を率いる身となり、さらに、他の攘夷軍が壊滅していく中で勝ち続け、英雄と呼ばれるようにまでなった。
ただし、最後には負けたが。
それも大負けした。
単に負けた勝ったで済むことではなく、大切な命を多く失ってしまった。
「責任をとる?」
銀時が眉間にしわを寄せる。気に入らないことを言われたような厳しい表情だ。
「ああ、だが、腹を切るつもりはない。おまえに言われたからな」
昔、銀時とたったふたり、天人兵に取り囲まれ、もはやこれまでと思い武士らしく潔く腹を切ろうとしたとき、銀時に言われた。
美しく最後を飾りつける暇があるなら、最後まで美しく生きようじゃねーか。
その言葉は、胸に深く刻みこまれている。
「最後まで背負っていくということだ」
そう告げ、なんとなく銀時から離れる。
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