ゆらのと

□第二部 一、
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背中がずしりと重い。
「銀ちゃん、早く歩くアル。日が暮れちゃうヨー」
少しあやしい日本語が背中のほうから聞こえてくる。
声の主は十代半ばまではまだいかないような少女だ。
名は神楽。
中国風の服を着て、髪を左右ふたつお団子に結っている。
銀時は神楽の歳がいくつなのか知らない。聞いたことがなかった。
言動から見た目のままの年齢だろうと思うが断定はできない。
神楽の肌は透けるように白い。
その姿は地球の者とほとんど変わらないが、銀時の知らない星の出身で、夜兎という種族である。夜兎族は驚異的な戦闘能力を誇り、宇宙最強の傭兵部族として有名だ。
「歩くのが遅くなってんのは、重いもん背負ってるせいだろーがよ」
「重いもんって私のことアルカ!? 女の子にひどいこと言うアル。私、傷ついたアル、慰謝料払ってほしいアル」
銀時が言い返すと、すかさず神楽は反撃してきた。
だから、銀時はまた言い返す。
「なんだてめー、ずいぶん元気じゃねーか。疲れきってて歩けねーんじゃなかったのか」
返事はない。
「まあまあ、銀さん、いいじゃないですか」
隣を歩いている少年がなだめるように言った。
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