ゆらのと

□第一部 四、
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銀時は吹く風に肩を震わせた。
秋も深まり、夜になれば水の中にでもいるかのような冷たさだ。
まして、今、山にいる。
気温は高い場所に行くにつれ下がる。
銀時は山の中腹にある廃寺の門へと続く階段を足早にのぼっていた。
廃寺には、銀時が属している攘夷軍が潜伏している。
銀時は他の攘夷軍と連携するために使者として出て、その潜伏先から帰ってきたところだ。
話はうまくまとまり、予定より二日ほど早くこの寺にもどってこられた。
使者は銀時だけではなく、もうひとりいた。
「それにしても寒いの〜」
隣で脳天気な明るい声がした。
長身の男がブルブルと身を震わせて歩いている。
坂本辰馬だ。
他藩の出身で、この軍で知り合った。
陽気で、人懐っこい男で、どうやら銀時のことが気に入っているらしくて、やたらと話しかけてくる。
銀時はうっとうしいので邪険にしていたが、それでも坂本がまったく気にせず話しかけてくるので、諦めて、適当に相手をしてやるようになった。
以前、桂が銀時と坂本を見比べて、いいかげんな性格と癖毛であることが同じだと真顔で言ったことがある。
いいかげんな性格なのはともかくとして、あんな毛玉と一緒にするんじゃねェ。
あのとき、銀時は怒って抗議した。
銀時は毛玉とともに門を通りすぎる。
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