ゆらのと

□第一部 二、
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桂の顔を見ていられなかった。
夢の中の桂と重なって見えた。
今はいつものように頭のうしろの高い位置で結われている髪は、夢の中ではおろされている。
銀時の下で、その長く艶やかな黒髪は乱れている。
夏であってもあまり日焼けしない雪のように白い肌が、ほんのり紅く色づいている。
貪りつくして濡れた唇は開き、せわしない息をもらす。
身体の中に埋め込まれたものに内側から激しく揺さぶられる苦痛からか、それとも快楽からか、声をあげ、そして、ぎんとき、と呼ぶ。
たまらなく興奮する。
夢だ。
これは夢だ。
夢でしかない。
そう自分に言い聞かせ、思い出した光景を、よみがえってきた熱を、消し去ろうとする。
こんな夢を見るのはおかしい。
そう自分を否定する。
夢は願望ではない。
そう言い訳する。
しかし。
夢は正直だ。
そう思う。
認めるしかない。
自分は桂に欲情している。
今も。
夢の中だけではなくて。
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