ゆらのと

□第一部 二、
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「まったく手伝わないよりマシだろ」
銀時は言い返した。
勉学や農作業からこっそり抜け出すときは、ひとりとは限らない。
もちろん頭の堅い桂が一緒に来るわけはない。
他の塾生だ。
松陽が自分の塾では身分の違いなどにこだわらないので、最初は異端の者として桂以外の塾生たちから距離を置かれていた銀時も日がたつにつれ彼らとの距離は無くなっていった。
「マシとかそういう問題ではない」
桂はむっとした表情になった。
真面目なので、銀時のいい加減さが頭にくるらしい。
だが、それでも、よく桂のほうから話しかけてくる。
そして、銀時も、桂を見かければ声をかける。
性格はまるで正反対のようで、しかし、気が合わないようで気が合って、考えが驚くほど一致しているときもある。
くだらない話をして、気がつけば、ずいぶん時間がたっていたこともあった。
そういうときには、そのままずっと話をしていたくて、離れがたい気分になった。
もっとも、そんなことは、顔には出さなかったが。
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