小説

□好きです。
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「宗次郎。」

名前を呼ばれて振り返る。

稽古が終わってすぐに道場から抜け出した僕を追ってきたのだろう。
僕も近藤先生も、稽古着のままだった。

「どうしたんだ、そんなに慌てて。用事でもあるのか?」

「あ、いえ…、特に無いんですけど……。」

別に特別隠し立てする必要はなかったのに、僕は思わずごまかしてしまった。
後には引けないじゃないか。

近藤先生は「早めに着替えておけよ。」と言いながら僕の頭を撫でる。

「先生……僕、15になったんですけど…。」
ちょっとムッとしてみるが、近藤先生は笑うだけだった。

「なあに、まだ15じゃないか。まだまだ子供さ。」


たわいもない話を少しした後、僕達は別れた。



……そう。
別に隠すことはなかったんだ。
近藤先生だったら知っていたかもしれない。

土方さんは来ているか、なんて……。


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