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□Time〜彼女の10分〜
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速く−−−。
早く行かなくちゃ!
アイツのところへ。
いつもの待ち合わせ場所まで、あと少し。
あーっ!もう!
どうして私はいつもこうなんだ!
いつもギリギリの行動…、いや、アイツとの約束に限ってと言うのなら、私はいつも待たせる立場だ。
待たせたくなんてないのに…。
誰より早く逢いたいのに。
それもこれも、全部、弟のせいだ!
アイツに会う日に限って何かと邪魔をしてくる、憎くて可愛い片割れ。
………いや、結局は私が悪いんだよな…。
お願い、早く着いて!
もっと速く走れるだろ?
この道、いつもより長くないか?
どうしてこんな日にこんな走りにくい恰好してきたんだろ…
いつもみたいにデニムにすればよかったんだ。
あぁもう待ち合わせの時間、過ぎてる…
息が上がって、熱くて、でも皮膚がぴりぴりと痛い。
アイツ、予定よりきっと早く着いてるだろうな…
寒くて凍えてないかな。
逢いたいよ。
静かで優しい笑顔…
やだ…、胸が痛いな。
あともう少しの辛抱
この角を曲がったら、きっと見える、昼に映える夜色の髪。
大好きなアイツ−−−
「アスラーンっ!」
待たせてごめん…
fin.