鷹の爪関連

□雨宿り
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「雨宿り」をテーマに吉総、デラ総、将総。



*吉総*

雨の日に全てに対してやる気がなくなってしまうのは、人間の本能なのかもしれない。
出かけたりする気はもちろん、家の中で何かするのも億劫になる。

ああ、でもこれって子供には当てはまらないのかもな。
菩薩峠は今日も元気に塗り絵をしてるし、俺も小さい頃は雨が降ろうが槍が降ろうが毎日のように野山を駆け回ってた記憶がある。
雨脚が強くなって帰り道が分からなくなると、よくボロい小屋の軒下で雨宿りをしてた。
そうしてると、どこからともなく母さんがやって来てくれたっけ。

雨のせいで他の音が全部消されて、世界で独りぼっちになってしまったような感覚にとらわれている中、その世界を突き破って来てくれた母さんがどれだけ自分に安心をもたらしてくれたか、今でもはっきり覚えてる。

雨の中外に出るのは気の進むことじゃなかっただろう。
でも自分の子供が、俺のことが心配だったから、大切だったからその億劫な気持ちを封じ込めてやって来てくれたんだと思う。



窓越しに雨の強さをうかがいながらそんな風に思想を巡らせていると、総統が夕飯の買い出しに行っていたことを思い出した。

「総統、傘持っていってたっけか」

さっきまで動きたくなかったはずなのに、気が付いたら足は玄関の方に向いていた。

俺は軒下で誰かを待つ側から、いつの間にか蛇の目でお迎えする側になっていたらしい。



「総統迎えに行ってきます」

基地にいる団員にそれとなく言ってから、ビニール傘片手に走りだした。

傘は自分がさしてる一本だけ。
予備はわざと取らなかった。

面倒な中来てあげるんです。
相合傘のご褒美くらいくださいよ、総統。



――――――
大きくなったけど、大人にはなりきれてない吉田くん。
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