確かなメロディー(弐)

□第六十五話 デコピン
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幽君とルリさんの相談があった翌日 夕方



『すみませんトムさん、静雄さん、ヴァローナさん。学校の講義な長引いてしまって……』

「いやいや。ちゃんと連絡もらってたから問題ないさ」

「仕事と勉学の両立の困難は了承済みです」

「お疲れ様、桜」



今日はどうしても外せない講義があって、しかもそれが長引いてしまい、仕事に遅れてしまった。


ヴァローナさんは相変わらずの難い日本語で、

静雄さんはいつも通り頭をポンポンしてくれた。



『今日のノルマは…もう終わっちゃったんですよね…』

「あぁ、今日はいつも以上に順調でな。ま、送金したら皆で夕飯食べに行こうぜ」

『はい』



そう言って、私達はサンシャイン60階通りを歩く。



「しかし、昨日お前の弟が連れてきた猫、可愛かったなぁ」

「肯定します。静雄先輩の頭部に登攀する猫の外観は、可憐と表現するに的確です」

『登攀…て』


まぁ…、確かにあれは可愛かったけど……


「俺はどっちかっつーと犬派なんすけどね」


…ぁ、何となくわかります



そんな事を話しながら静雄さんの隣を歩いていると、少し表情が歪んだ。


まさか物騒な事考えてるんじゃないか、と一瞬思ってしまったけど…



「よし、今日は景気づけに露西亜寿司にでも行くか?」

「否定に近似する提案です。既知の知り合いが存命する店内で栄養摂取をする事は、緊張、羞恥の理由から極力避けたいです」

「そう言うない。同じロシア人仲間なんだろ? ……まあ、どうしてもっつーなら、モーパラの池袋牧場辺りですき焼きでもたらふく食うか……静雄と桜ちゃんはなんか食いたいもんあるか?」

「俺はなんでもいいっすよ」

『私も。あ…出来たらあまり肉系は…ちょっと……』

「お、流石女の子らしいよな。じゃあどうすっかなぁ。たまにゃ明治通りの沖縄料理屋にでも行くべぇか」

「…桜、また気にしてんのか? お前はもっと食えっての」

『う……そう言われましても…』



静雄さんから指摘され、思わず口ごもる。



「私も同意見です。桜先輩の体系は日本人女性の平均体格と比べ痩せ過ぎに部類されると予測します。従って、主に肉類を食すべきと提案します」

『ヴァ、ヴァローナさんまで……』



どう見てもスタイル抜群の二人にそう指摘されても、どうにも言い返せない……


最近、本当に運動が足りていないのに……



そうしてしばらく歩いていると――





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