風舞の音に散る花

□第卅参話
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血と争いの夜が明けて……翌日



「……、ん」


藤堂が目を覚ましたのは、日が昇る小半刻ほど前だった。

まだ覚めきっていない意識の中で、すぐ傍に誰かの気配を感じた。

ゆっくりとそちらを見ると、美しい白の装束を纏った女性が一人……


「……ぁ」

「――! 平助君、気がついた?」


懐かしい声を聞いて、彼はようやくそれが美咲だと悟った。


「美咲……おれ、」

「まだ動いちゃ駄目よ。しばらくは安静にしないと。
皆さんが来たら起こしてあげるから、もう少し寝てていいよ」

「……おぅ…」


起き上がろうとしたが軽く押し止められ、藤堂はまた眠りに入ろうとした。

しかし、


「――っ、ごほっ」

「…! 美咲……?」

「……大丈夫、何でもない」


藤堂には見えなかったが、口元を覆った美咲の右手の平には生温かい物が広がっていた。

彼が眠ったのを確認してから手を見てみると、


「っ、!!」


彼女自身も驚くほどの血で染まっていた。

しかもただの血ではない。

汚れきったような、黒ずんだ色をしている……


この原因を、もちろん美咲は気づいている。

彼を――藤堂を助ける為に自分の力を使った代償

この事実を周りに、咲華にいつまで隠し通せるか正直わからない。

それでも美咲は自分を言いきかせ、置いてあった水桶で紅く染まった手を洗い流した。

そしてその水も、誰にも気付かれないよう密かに処理しておいた。



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