風舞の音に散る花

□第捨漆話
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徳川家が将軍になってからの太平の世の初めより、将軍上洛の際は宿舎の役割を果たす為に存在する二条城

新選組の役目は、将軍様のいるこのお城を警備だ。


将軍様の身に何事もなく、ここまで辿り着いたのは先刻のこと。

道中警備からそのままお城周辺の警備にまわって一刻程。


『……姉様。皆さんあんまり緊張してない感じがするね』

「……確かに」


私が声をかけると、姉様も静かに返してきた。

私達が担当しているのは裏門の方。

私達と言っても、ちょうど隊士の方達が交代に周ってるから二人しかいないんだけど。


姉様は遠くを見るように向こうを見ながら独り言のように言った。


「今頃…、近藤さんや井上さん、斎藤さん達は、偉い方々に挨拶に周ってるのよね」

『千鶴ちゃんも伝令役で頑張ってるみたいだし、私達もお勤めしっかりしないとね』


私はそう返しながら、同じく空を見上げてみた。

今日は雲が少なく、星もよく見える。


……総司さんや平助君は、大丈夫かな…?

安静にしててくれるといいんだけど、何かあったら無理矢理体を引きずってでも来そうだし…


私は何気にはぁ、とため息をもらす。

そこでちょうど、向こうの方から千鶴ちゃんが走ってきた。


「あ、咲華さん! 美咲さん!」

「千鶴ちゃん。伝令お疲れ様」

『大丈夫? 疲れてない?』

「はい、全然大丈夫です!」


千鶴ちゃんは少し乱れた息を整えながら笑顔で答えた。

全然大丈夫、にはあまり見えないけど、千鶴ちゃんも一生懸命やってるんだと改めて感じた。


「お二人は大丈夫ですか?」

『私達? 全く問題ないよ』

「これだけ厳重な警備をしてるんだから、こんなところに敵が来るわけ――
!!」

『? 姉様――!!』

「――――!!」


姉様が言い切る途中、私は背筋にぞくりと、冷ややかな何かが走るようなものを感じた。

それは、千鶴ちゃんも同じようだ。



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