風舞の音に散る花
□第捨陸話
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元治二年 閏五月
新選組がほぼ無理矢理に西本願寺に押しかけて、もう三ヶ月が経つ。
八木邸にいた頃とは広さが全然違うから覚えられるか不安だったんだけど、
一月も色々歩いていたら以外にももうなんとなく覚えてしまっていた。
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ある日の稽古場
『よし。それじゃ、今回はここまで。
次も頑張りましょうね』
「「「「はいっ!!」」」」
今日の稽古は私が師範を務める日だった。
人に何かを教えるのはあまり得意じゃないんだけど、総司さんとの打ち合いを見た隊士の方達にぜひ教えてくれと言われてしまったのだ。
まぁ……楽しいからそれでいいのだけれど
稽古を終えた隊士の方達はぞろぞろと行ってしまって、残ったのは私だけだった。
『……さて、私も戻ろうか』
ふぅとため息をついて竹刀を直し、私も稽古場を出る。
戻ったら書類まとめて、その後総司さんと巡察があって……
ぼんやり考えながら歩いていると、途中で千鶴ちゃんが境内を走ってるのを見かけた。
一人で走って何かあったのかな、と思いながら私はその後を追ってみることにした。
「山南さん。食事の準備ができました」
「あぁ、君でしたか。ありがとう」
境内の裏側の日陰にいたのは、山南さんだった。
どこか、顔が青白い気がした。
あの事件以来、山南さんは死んだという事になっている。
本当の事を知っているのは、幹部の数人の方々と、千鶴ちゃん、姉様、そして私ぐらいだ。
もちろん、伊東さんには何も知らされていない。
山南さんは千鶴ちゃんの横を通って行こうとする。
その時――
「……!」
『え……?』
気のせいかもしれないけど……一瞬、山南さんの髪が白くなったように見えた。
光の所為だろうか…
でも、それは千鶴ちゃんも一緒みたいだった。
「どうかしましたか?」
「あ、いえ! なんでもありません!」
怪訝そうに尋ねる山南さんに、千鶴ちゃんが慌てて首を振る。
このままだと私も見つかってしまう気がして、私は慌てて戻ることにした。
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