風舞の音に散る花

□第捨伍話
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「……え!?」


私の目が覚ました時には、寝てしまってから結構経っていた。

いや……覚ましたというより、覚めたと言った方があっている。


不意に、どこからか強い力を感じた。

感じるはずの無い…あの力を……

でも強かったものの、すぐに消えてしまった。

私にはこの力が誰のものか、絶対に知っていた。


「……咲華、……?」


まだ体に気だるさは残っているけど、今はそれどころじゃない。

私は起き上がって、部屋を出ようとしたんだけど、


「美咲ちゃん、いる?」

「……え?」


襖を開ける前に、向こう側から声をかけられた。

この声は……沖田さん?


「はい。いますけど…」

「悪いけどここ開けてもらえる? この状態だと開けられないから」

「は…、はい……?」


襖越しだけど、沖田さんが何かを抱えてるのはわかった。

確かに両手が塞がってるんじゃ開けられない。

私は何を抱えてるのか気になりつつゆっくり開けると――


「…………え?」


目の前に立っていたのは、もちろん沖田さんだった。

だけど…彼が両手に抱えているのは……


目を閉じてぐったりした、咲華だった。


「咲華……?
咲華! 咲華!!」


何度呼びかけても、咲華は目を開けてくれない。


……こんな事…前にも、あった?

そうだ……あの時だ

一番思い出したくない……


「な、んで……? どうして……どうしてですか!!?」


あの時を思い出すほど私は自分を責めてきたけど、
今は何故か、その怒りの矛先は沖田さんに向いていた。

でも、沖田さんにもどうしてこうなったか理解できていないみたい。


「説明は後! 咲華ちゃんの布団敷いて!!」

「私の布団使って下さい! どうせこうなったら寝れませんから!!」


慌てているのか衝突しあってるのか微妙な口調で言い合いながら、私は沖田さんと咲華を安静にさせるように寝かせた。



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