確かなメロディー(弐)

□第六十六話 奇襲
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そんな感じにしばらく歩いていたら――



「警告が存在します。前方を向いて歩行したまま拝聴して下さい」

『!』



ヴァローナさんの突然鋭い口調と同時に、私も背中に嫌な予感を感じた。

これは……



「?」

「……?」

「なんだよ」



男性三方がそれぞれの疑問の顔を向けると、ヴァローナさんは厳しい口調のまま続ける。


「前方を向いて下さい」

『…ヴァローナさん、まさか……』

「…先輩もお気付きのようですね。

……推測ですが、尾行者一人ではありません」





私はこの時まだ知らなかったけど、

同時刻、この池袋では色々な事が一度に起きていた。


まず一つ、

新羅さんが自宅で、宅配便の配達人に扮装した何者かにいきない襲われた事


幽さんのマンションに向かっていたセルティの元に帝人から電話が入り、その事が知らされた事


もう一つ、

傍観者気取りの情報屋さんがかつての学友である新羅さんを特に心配することもなく、街のどこかでこの事態を楽しんでいた事


さらに一つ、

幽さんが追っていたルリさんのストーカーの仲間が、ルリさんの猫である独尊丸を預かっている杏里ちゃんを狙っていた事

しかし、突然現れた覆面の男達に襲われ、杏里ちゃんのアパートは火を着けられずに済んだ。

そしてストーカー本人が、今度は自ら動き始めた事


これは、今日一日で起きたことじゃない。


数日前に着いた火種が成長し、私達の知らない間に街中に広がってしまった結果だ。


私達は、その元火の膨張した姿でようやくその一部に触れた。


でも、それはあまりに遅い発見だった…



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