風舞の音に散る花
□第廿玖話
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新しい屯所に移って、数ヶ月が経つある日の事――
『総司さん、暑くないんですか?』
「ここ(京)の暑さも慣れたよ。咲華ちゃんは?」
『大丈夫、ですけど…』
この状況は…ちょっと恥ずかしい…
まだ残暑が少し残っているお昼
私は今、総司さんに後ろから抱き締められつつ縁側に出ていた。
本当は寝てもらわなければいけないんだけど、今日は調子がいいようで顔色が良く、特別に縁側まで出ることを許した。
もしこんな所を土方さんにでも見られたら怒られてしまうのだろけど……
今日ぐらい、許してもらえるよね
「君と会って、もう何回目の秋だろうね」
『はい…もう、三年前になるんですね。私達が出会って』
「出会い方は最悪だったね。羅刹を追っていたかと思えば、可愛い女の子に睨まれてさ」
『そ、そう…でしたね……』
「はっきり言って、僕あの時一目惚れしてたんだよ」
『え!? そうだったんですか!?』
「うん。咲華ちゃんは?」
『…あの時は、ただ必死だったのでよくわからないんですが……それでも、胸がどきどきしたのは覚えています』
「そう…じゃあ一緒だね」
総司さんは私の手を取り、やんわりと包んだ。
温かい彼の温度に私は安堵を覚えつつ、反面では不安も覚えていた。
…総司さん、細くなってる……
背中に感じる重さもそうだったけど、もとから細かった指がさらに骨ばってきたような気がした。
労咳
元気に見えても、彼が背負っている重い病の名が、頭に過ぎる。
もちろん患っている彼自身が一番辛いはずなのに、どうにかしてあげたいと考えてしまう私は、浅はかで無力なのに……
「…咲華ちゃん?」
『――! あ、はい 何ですか?』
「また考え事してる。こんな時にそんな顔しないでよ」
『…ごめんなさい…… お詫びになんでもしますから』
「…なんでも?」
…総司さんはいつもの悪戯するような笑になる。
失敗した、かな?
『な、なんでもって言っても一度だけですよ? あと無理なものは無理ですからね!』
「僕だってそこまで意地悪しないよ。でも…そうだね……」
『……』
変な沈黙があるものだから、私は思わず身構えてしまう。
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