風舞の音に散る花
□第廿玖話
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≪side沖田≫
「寝ちゃった、か…」
目を閉じて間もなく、咲華ちゃんは小さな寝息をたて始めた。
思えば、この子の寝顔を見るのはいつ以来だっただろうか…
ここしばらく僕が休んでいる代わりに、彼女に仕事を押し付けてばかりだった。
ただでさえ、美咲ちゃんの事や自分の事で大変だっていうのに。
「……ごめんね…咲華ちゃ…
ごほっ、ごほっ…!」
言い切る前に喉から何かせり上がってる感覚が襲ってきて、慌てて手で口を被った。
咳はしばらく続いて、ようやく治まった頃に手の平を見てみれば、
そこには赤黒い血が広がっていた。
…また、量が増えてきている……
しばらく調子が良かったのに、最近になってまた悪くなってきたのが自分でもわかる。
まだ咲華の手を握っている手も、思うように力が入りきれていない……
……僕には、もう時間がない…
それは自分が新選組の“剣”として生きていく時間か、
それとも生きていけるだけの時間か……
どちらにしても、今の自分はとても非力た。
それが、この前の風間達の戦いで身に刻み込まれた。
あの時美咲が来てくれなければ、どうなっていたか…
考えてくもない……
“強くなりたい…”
守りきれなかった愛する人を抱き締めたとき、その願いだけが頭にあった。
せめて、この子だけでも…全てを捨ててでも離したくないと思えるこの子だけでも守れるように、強くなりたい……
僕は手を伸ばして、眠る咲華ちゃんの綺麗な髪を一房に口付けを落とした。
「咲華ちゃん…君は、僕が守るよ…全てのものから…風間から……今度こそ…」
次こそ……どんな事をしてでも――
この心強く、そして悲しい誓いを聞いている者は、その場に誰もいなかった。
〜続く〜
⇒あとがき