風舞の音に散る花

□第廿捌話
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千姫が帰った後――



『……はぁ』


私はまた、部屋で一人いた。

まだ眠くはなかったけど、とりあえず布団の中に入っていた。

姉様はと言うと、あれから何も言わずどこかへ行ってしまった…


……

私は、姉様からは何も聞いてなかった……


姉様は、私が知らない間に色んな事をしていた。

千鶴ちゃんに真実を話していたり、千姫に会っていたり、
そして――私の知らない何かを隠していたり……

姉様が遠くなっていくような気がして、私はまた不安に襲われる。


私は、姉様とずっと一緒にいたはず。

里を出るときも、新選組に入った時も、皆さんと楽しく過ごしている今も……

どうして…

どうしていつの間にか、
こんなに……離れてしまったんだろう……


天井を見つめたままそこへ右手を伸ばしてみるも、それをとってくれる人は誰もいない…


私は今…一人なのかな……


例え周りに人がいたとしても、誰もこちらを見ようとはせず、背を向けている。

それはただ、悲しく虚しいだけの――孤独感

ぎゅっと瞑った目に、涙がたまっているのがわかった。


「……大丈夫だよ」


…………え?


「大丈夫だから。相手が鬼だろうが何だろうが、僕が君を守るから。安心して」


…この声……

――総司、さん………


何もない闇に光が指すような、不思議と安心する声

いつか同じような不安になった時に言ってもらった、大好きな人の言葉……

その言葉が、どれだけ私を助けてくれたか……


頬を流れた雫は、もう悲しい涙では無くなっていた。



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