風舞の音に散る花

□第廿捌話
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『……っ!』


安堵に浸っていた私は、途端に目を開けて布団から飛び起きた。

外から聞こえる怒号と悲鳴、鋼と鋼が弾き合う音

そして――この気配……

間違い…、彼らが来んだ


私はすぐ近くに置いていた刀を左腰に差し、音が聞こえる庭に近い襖の方を見る。


彼らは、私達を狙っているんだ。

私が行って止めないと止めないと!


気を引き締めて襖を開けようとした。

しかし――


『!!?』

「……久しいな、咲華」

『か、風間様…っ』


その寸前に勝手に襖が開き、向こうに立っていた相手が私を見下ろす。

月明かりで輝く金色の髪、全てを畏怖させるような鋭い紅の瞳……

風間様だった…


『ど、どうして、…ここに!?』

「どうして? おかしな事を聞く。言っただろう。必ず迎えに行くと」

『っ!』


風間様は私から視線をそらさず、一歩一歩部屋に入り、手を伸ばしてくる。

それに合わせて、私も距離をとるようにあとさずる。

でもそれもすぐに終わり、私の背中は反対側の壁についてしまった。


『っ!? 来ないで!!』

「案ずるな。お前を殺すようなことはしない」

『離して!! い、嫌!!』

「……すまない」

『うっ、……』


腕を掴まれて引き寄せられたかと思うと、小さな謝罪の言葉と一緒に、腹部に鈍い痛みが走った。

見ればそこには風間様の拳が入れられていて、次第に目が霞んできた。

力が入らなくなって崩れ落ちそうになる体を受け止められ、消える寸前の思考の中で、最後にこの言葉だけが聞こえた。


「…鬼は、鬼の元へ帰るが定め……」


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