風舞の音に散る花
□第廿漆話
2ページ/11ページ
ある日の夜――
『…姉様、今日も帰ってこない…』
そろそろ布団に入っていい時間なのに、姉様は帰ってこない。
今日も、また一人で寝なきゃいけないのかな……
そう思うと、無意識に溜息が出た。
寂しい、訳ではない。
ただ、この所嫌な感じがして仕方がない。
今まで静かだった何かが、ゆっくりと動き始めるような…
光が消えて代わりに闇が広がるような…そんな感じ……
『…ううん、私が考え過ぎちゃってるだけよね。早く寝よう』
両頬を二、三度叩いて不安を祓い、私は布団に潜り込んだ。
明日姉様に会えたら、今度こそ無理矢理にでも休ませようなどと考えていると、
「あの、咲華さん。起きてますか?」
『! 千鶴ちゃん? どうしたの』
「はい。土方さんに広間まで来いと言われて。咲華さんも連れて」
『? 私も?』
「お客さんだそうです。誰かは来ればわかると」
『…わかったわ、少し待ってて』
お客さん…こんな時間に?
でも私にって事は…あまり良い予感がしないんだけど…
でも、それを確かめる為にも行かないとね。
私は布団から起き上がって、寝巻きから慌ただしく着替えた。
.