風舞の音に散る花

□第廿伍話
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慶応三年 三月



島原での事件から、すでに四ヶ月

私も姉様も今まで通り新選組にお世話になりつつ、任された仕事をこなす日々が続いていた。

風間様達鬼も全く来きておらず本当に平和そのもので、私達には充実していた。

――ただ、小さな問題は幾つかあったけど……

まだ燻り続けている、伊東さんの存在

そして――姉様


――――――
――――
――


ある日の夜



「じゃあ咲華、私ちょっと出てくるね」

『え、また?』


そろそろ寝る時間だと言うのに、突然姉様はそう言って立ち上がる。

こんな事が、前からよくあった。

しかも最近は、それが長く続くようにもなっている……


『最近ずっとそうだけど、一体何やってるの?』

「え……大した事じゃないわよ。ちょっと仕事があるだけよ」

『こんな夜に? 斎藤さんってそんなに死番の日が多かった?』

「ううん、一さんとじゃないわ」

『……?じゃあ、』


誰と、と聞き切る前に私は口篭った。

目の前の姉様が、悲しい顔をしていたから……

聞かないでと、声に出さずに言われてる気がして……


『……でも、大事な仕事なんだよね。頑張ってね』

「…ごめんなさいね、心配させてしまって……」

『大丈夫よ。姉様を信じてるから』

「……そう」


表情を和らげた姉さまはおやすみ、と言い残して部屋を出ていった。

足音が遠くなっていくと、辺りは静寂に包まれた。

こう一人っきりになると、途端に寂しさがこみ上げてきてしまう。

こんな自分が、本当に情けなくて仕方なかった……


私も、いつかは姉様と離れなきゃいけない時が来るんだ。

いつまでも姉様に甘えてばかりじゃ駄目なのに……


『……もう寝よう』


解決策が見つからず、結局諦めて私は敷かれた布団に潜ることにした。


何をしていたのか、また明日聞いてみよう。


そんな事を考えながら、私は目を閉じて眠りに落ちた。



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