確かなメロディー(弐)

□第五十九話 家族
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「? どうしたの桜、不安そうな顔して」

『! ううん、何でもない。ぼーっとしちゃっただけ』

「そう? ならいんだけど……
早くお隣のお客さん紹介してくれいないと失礼でしょ?」

『! あっ!!』



お母さんが言ってくれて本当に良かった。


一瞬でも静雄さんの事を忘れてたなんて!!



『えっと…静雄さんは――』

「「桜の彼氏」」

『ちょっ…! 兄さん何先に言っちゃってるのよ!!』

「だって事実じゃねぇかよ」

『だっ、だからって段取りを…』

「まーまー、大丈夫だって桜」

「大和兄さん…」



自分勝手な和真兄さんに対し、大和兄さんは仲介役のようになだめてくる。

あれ見ろよ、と兄さんの向ける視線の方を見ると、



「あなたが桜の彼氏さんだったのね。
初めまして、桜の母の海音寺遥香です。娘がいつもお世話になっています」

「い、いえ。平和島静雄です」

「静雄さんね。海音寺家にようこそ」



静雄さんもお母さんも、仲良さそうに挨拶していた。



うん……流石私達のお母さんだ…



「こんな所でなんてなんだし、早く皆上がりなさいよ。皆の話も聞きたいし。静雄さんもどうぞ」



お母さんは明るい笑顔で立ち上がり、楽しそうな足取りで廊下を歩いていった。

兄さん達も続いて玄関を上がって行き、靴を履いたまま突っ立っているのは私と静雄さんだけになった。



「…桜」

『は、はい!』

「お前のお袋さん、若いな」

『見た目はですけどね。あれでもゆうに40代前半ですよ?』

「40代!?」

『三児の母ですから、ね』



そう…家のお母さんは見た目が20代に見えてしまうほど若い。


実年齢を聞いたら誰だって驚く。


私だって偶にわからなくなっちゃうもん…



「おーい、桜も静雄も早く来いよー」

『はーい』



和真兄さんの呼ぶ声が飛んできて、私達はようやく家に上がった。



さてさて、これからどんな話が始まるやら…

正直不安だ……




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