確かなメロディー(弐)
□第五十八話 帰郷
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そして――とある電車内
『ごめんなさい静雄さん、突然変なお願いしてしまって……』
「桜が謝る事じゃねぇだろ。俺がいいって言ったんだからよ」
『それは、まぁ…そうかも知れませんが……』
……やっぱり、申し訳ない気がする…
今回私が静雄さんを里帰りに誘ったのは、理由がある。
でも……それをまだ静雄さんには話していない。
何だか騙してるみたいで、凄く忍びない気分だった……
『………やっぱり無理です』
「だから気にするなって。それに……」
『?』
「…俺も、好きな奴の家には、行ってみたいって気持ちはあるんだ」
『!! ……』
左隣に座っている彼を、思わず見上げてしまう。
ちょっと顔が紅いと思ったのは、私の見間違いかな…?
『……ふふっ』
「どうした?」
『いえ、嬉しいなーって思って』
この車両には私達以外誰もいなかったから、私は静雄さんの方に頭を預けてみた。
静雄さんは一瞬驚きつつも、優しく微笑んで肩に掛かったを撫でてくれた。
そんな私達だけの空気を乗せつつ、
電車はコトコトと進んでいった。
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