確かなメロディー(弐)

□第五十四話 本当の私
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さっきの茜ちゃんの事を考えていたら、今度はヴァローナさんが来た。



『えっと……何でしょうか?』

「……失礼ですが、あなたを何と呼称すべきか明確ではありません」

『………?』



……えと、つまり……? 私をどう呼べばいいかわからないと


またわかりにくい文章を話すなーこの人は



『どう呼んでもいいですよ? 桜でもいいし、海音寺でもいいですし』

「そうですか。では桜先輩と呼ばせていただきます」



先輩か……


懐かしい響きだな〜



『あの……、どうして私をここに残したんですか?』

「先輩にお聞きしたい事があります」

『?』

「……私達は、どこかで邂逅したでしょうか?」

『え……』



そう……だったかな……


でもこんな綺麗な人なら一回会ったら忘れるはずないだろうし



『いや、多分無いと思いますよ』

「……そうですか。人違いですか…」



………


やっぱりちょっと不思議な人だな


まぁ、別にいいけどさ


変な考えしてなかったら、私はそれでいいし――



『……っ!』



突然、嫌な感覚が襲ってきた。


周りを見ると、いつの間にか車がいくつも停まっていて、

中から目出し帽を被った男の人達が何人も降りてくる。


いかにも、悪って感じだ。


男達は麻袋を手に、私達を取り囲もうとする。


誘拐でもする気なのだろうか。



私は警戒しつつ、ベルトのフォルダーのナイフを確認する。





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