風舞の音に散る花

□第廿話
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私が屯所に戻るのは五日振り……

姉様も総司さんも、皆さんもきっと心配させてしまっているだろう…


『うぅ……どうしよう……』


門前まで来れたのはいいけど……やっぱり入りにくい!!


でも、だからってここでじっとしてる訳には絶対にいかない。

記憶の事とか風間様の事とか、姉様達に早く伝えないといけない事はたくさんある。

大丈夫だ自分、自信を持って!


『…よっし、』


一度深呼吸をして目を開き、思い切って私は門をくぐった。


『細川咲華です! た、只今帰りました!!』


……何となく道場破りっぽく玄関先で言ってしまった…

でもすぐに向こう側からばたばたと足音が慌ただしく聞こえてきて…


「「「咲華!!」」」

「咲華さん! 戻られたんですね!!」


姉様を始めとして、千鶴ちゃんも土方さん達も皆走ってきた。

千鶴ちゃんが少し涙目になりながら嬉しそうに言う中、
姉様は現れてすぐ私に抱きついてきた。


『ね、姉様!?』

「咲華! 怪我は無い!? 頭痛とか、熱とか無かった!!?」

『も、もう大丈夫よ! 何ともないから!!』


私の肩に顔を埋めて聞いてくる姉様は、泣いているような声だった。

実際顔をあげると、目は赤くなっていて、目の下には薄っすらと隈ができていた。

私がいない間どんな風に過ごしていたのか、大体予想がついてしまった。


『姉様…また無理してたんでしょ……“あの時”みたいに……』

「!!
……そう、やっぱり…戻ったのね」


うんと頷けば、姉様は困ったような苦笑いを浮かべた。

どうしてあんな事をしたのか。

今すぐ聞きたかったけど、姉様はその前に後ろを振り返って、土方さん達の方に言った。


「約束通り、咲華が帰ってきたので全てをお話します。ここでは他の人に聞かれてしまうかもしれないので、広間に集まってもらってもいいですか?」

「……あぁ」


土方さんは、怒ってるようではないけど難しい表情のまま答えて、すぐに行ってしまった。

他の皆さんも移動する間、姉様は軽く俯いたまま何も言わなかった。


『姉様……』

「……大丈夫よ。私が皆さんに話すから、咲華は何も心配しないで」


読んでみれば、姉様は笑ってそう返してくれた。

でも、その笑顔はどこか悲しそうで……

私は何を心配しないでいいのか、全くわからなかった。



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