確かなメロディー(弐)
□第五十二話 緊急事態発生?
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『静雄さん、さっきの大丈夫だったんですか? 窓ガラス割っちゃったらしですけど』
池袋駅に向かう道を歩きながら、私は何気に静雄さんに聞いてみた。
続けてトムさんも言ってくる。
「ったく、いつもいつも、死なねーからいいようなものを」
「……すんません、トムさん。桜も心配かけて悪いな」
『いえ、怪我しなかったのならいいんです』
「少しはこう、目の前で五百円玉を折り曲げて脅すとか、そういう平和的なやり方はできねえのかよ。お前なら、指で千切るぐらいは簡単にできるんじゃねえか?」
「あー……でも、確か硬貨を勝手に折り曲げたり伸ばしたりするのって法律違反っすよ」
「なに? ……そうか、それはまずいな。じゃあ別の手を考えるか」
『というか、普通の人は五百円玉を指で折り曲げたり千切ったりなんて無理ですからね』
なんか話が常識から外れそうになってて私は慌てて突っ込んだ。
たまに思うんですけど、
静雄さんとトムさんって不思議なところで話がありますよね
「大体、さっきのバカもバカだ。静雄の事を知ってるみたいに喧嘩売るなんてよ……」
『え……、そうなんですか?』
「あぁ。なんか静雄が幽の兄貴って事しか知らなかったみたいだけどな」
『………』
「……そうですね」
「そこらのチンピラなら、お前を見ただけで十分効果があるんだがな……。最近はそういうのを知らないような、一般人っぽい奴の中からさっきみたいなバカが出てくるもんなんだな……」
「……すいません」
静雄さんが難しい表情で呟いていたから、私はちょっと不安になってきた。
『? 静雄さん?』
「なんで静雄が謝んだよ」
「え……いや、でも、俺がもっとちゃんとできてりゃ……」
「そりゃ、さっきみたいなアホがいるって事とは全然別の話だろ。正直、さっきは説教しちまったが、おまえはよくやってくれてるよ。こっちこそ、こんな危ねぇ仕事につき合わせちまって悪いと思ってるぐらいなんだからよ」
「……ありがとうございます」
前を向いて言うトムさんだけど、静雄さんはやっぱり納得行ってないようにみえた。
『静雄さん大丈夫ですよ。静雄さんはいつも頑張ってるって、トムさんも私もよく知ってますから!』
「…おぅ。ありがとうな」
そう言うと、静雄さんは少し表情が柔らかくなって私の頭を軽く叩いてくれた。
「ちと早いが、飯にするか」
不意に腕時計を見ながらトムさんが呟いた。
ちょっと早めだけど、私も少しお腹がすき始めていた。
今日はどこで食べるのかな
「たまにゃ露西亜寿司で豪勢にいこうぜ」
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