風舞の音に散る花
□第捨玖話
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私が黙っていると、翠華様はその事については何も問い詰めてこなかった。
私の事を察してくれたからか、次の話をしてきた。
「“いくら神子の力と言えど、使えばその代償は必ず帰ってきます。此度の代償は――姫巫女の鬼としての記憶、のようですね”」
「鬼としての?」
「“えぇ。自分が神鬼である事、そして自分が一族を消してしまった事全て。しかし、此度は本来の半分も力を発揮できていなかった故、時が経てば記憶は戻ってしまうでしょう”」
「…………」
里を滅ぼしてしまった記憶が消えていれば、咲華は苦しまなくていい。
でも、記憶が戻ってしまった後が私は心配だった。
姫神子の力は、母様から教えてもらった。
でもあれば、呪言以上に強力で、危険な力
その代償も、計り知れない…
なら、私は――
「……もう一度、呪言を使います」
「“正常に力が働けば、次こそあなたに代償がかかりますよ”」
「承知の上です」
「“……何を、望むのですか?”」
翠華様の言葉で、私は咲華の方に目を向けた。
これが、最良の選択かは私にもわからない。
でも、私に出来るのはこれしかないんだ……
「この子の……咲華の力を、もう一度封印します。鬼としての記憶が戻っても力の使い方は思い出せないように」
「“封印の呪……強力ではありますが、その代償は……”」
「私の命の半分……わかっています。でも、それでも咲華に少しでも未来があれば」
「“………わかりました”」
最後に聞こえた翠華様の声は、どこか安心しているようにも聞こえた。
そして翠華様は、私に封印の呪を教えてくれた……
――――――
――――
――
今の私には、普通の鬼の半分程度しか寿命がない。
それを使って、私は咲華に封印をかけたのだから。
でも…後悔なんて全くしていない。
悔やむなら、最初の呪言を失敗した時だ。
「……咲華…」
蛍火翠華を通して咲華が目を覚ました事を知り、私は安心し、怖がった。
私は自分の一族を、妹を使って滅ぼしてしまった……
記憶が戻った咲華は、やっぱり私を憎むだろうか……
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