風舞の音に散る花

□第捨捌話
3ページ/10ページ


――――――
――――
――


今から約二年前のある夜


亥の刻も過ぎたというのに、咲華と美咲は母に言われ、神社の社内にいた。


「どうしたの母様、父様? こんな時間に集めるなんて」

『……何かあったの?』


木の床に並んで正座した咲華と美咲は自分達の正面に同じく座っている父と母に聞いた。

いつもならもう寝ている時間なので、咲華は眠そうにまだ完全に開いていない目を手で擦っていた。

しかし対する両親達は、まるで今が昼間だというように目をきっちり開け、いつになく真剣な表情で二人を見つめていた。


少しして、母が口を開いた。


「……二人にはずいぶん昔に話したけど、私達が人間じゃないのは覚えてるわね?」

「うん。人を越えた、古来から日本に住む高貴なる存在――“鬼”。私達はその中でもさらに特別だって」

「そう…人も鬼をも越えながら、その二つの仲裁を務める、それが我ら――“神鬼”一族の役目」


美咲に続けて話す母の声は、やはりどこか光が無かった。

こんなわかりきった事を話すには、きっと何かがあったんだと咲華も美咲も感づいて、母の方に集中した。


「神鬼の中でも、あなた達二人は先祖の力を受け継いだ巫女。力はもういくらかは目覚めてはいるけれど、まだ完全には覚めきってはいない。
……特に、咲華はね」

『?』

「………」


まだ自分達の事についてあまり教えてもらっていない咲華は首を傾げたが、全てを知っている美咲は母と同じく表情を暗くした。


神鬼の中でも強い力を有する姫巫女と奏巫女には、それぞれ象徴とする特別な力がある。

それは産まれた時から持っているものではないが、時が経つにつれ少しずつ内に眠る力は目を覚まし、二十歳になる頃には完全に覚醒の状態になると言われている。

あと数ヶ月でその覚醒を迎える美咲は、咲華を守る為に通常よりも早く真実を母の口から聞いていたのだ。


.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ