風舞の音に散る花
□第捨捌話
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≪side沖田≫
「……どういう事ですか」
無音の部屋に、僕の声だけが流れた。
「咲華ちゃんを渡したって、どういう事ですか!!」
少し前、二条城の警備に行っていた土方さんや一君達が屯所に戻ってきた。
僕は無意識に咲華ちゃんを探したけど、何故かあの子だけいない。
皆もどこか沈んだ顔だった。
何があったのか尋ねて、土方さんから話してもらったのがつい今
「相手が咲華ちゃんを狙ってたのを知ってた上で、それでも渡したんですか!?」
「総司、少し落ち着け」
「これでも落ち着いてる方ですよ!!」
今だって土方さんに掴み掛かろうとする衝動を必死に抑えてる状態だ。
落ち着けと言われて落ち着けるなら、僕だって落ち着きたい。
……奴らが来るとわかっていたなら、意地でも行っていたし、無理矢理にでも咲華ちゃんをひき止めていた。
あいつらが咲華ちゃん達を狙ってたことなんて…、わかっていたはずなのに……!
「! ごほっ、ごほっ……!」
「「「!!」」」
「総司! 大丈夫か!?」
「……大丈夫ですよ。咳のしすぎで喉が傷ついただけですから」
……まただ。
咳をしただけで、口から血が滲んだ。
本当に、ただ喉を痛めただけならいいんだけど……
もしかしたら………
……そう言えば――
「…美咲ちゃんは、今どこにいるんですか?」
話によれば、攫われたのは咲華ちゃんだけで、美咲ちゃんは無事だと聞いた。
だったら、彼女から何か聞けるかもしれない。
でも、土方さんは表情を曇らせた。
「……部屋にいさせてる。だが…」
「ちょっと会ってきます」
「総司! でも今は…!!」
左之さんが何を言いかけていたのかも聞かず、僕は広間を飛び出して美咲ちゃんの部屋まで急いだ。
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