確かなメロディー(弐)
□第四十九話 翌日
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誰の願いにも関わらず、時間は自然に過ぎていく。
そして今日も、
長い夜は明け、朝日が昇る。
5月5日 池袋
「………ん、」
自宅で一番先に目を覚ましたのは静雄だった。
ちなみに一人暮らしの彼が一番先なのかと言うと、
彼の隣、彼と同じ布団には、
桜がまだ夢の中にいたからだ。
「桜、起きろー朝だぞー」
『……んぅー……』
「桜〜?」
静雄は桜の肩を軽く揺すりながら声をかけるが、彼女は少し唸るだけで目を開けようとしない。
『う〜……あと、…五分だけ……』
「さっきも言ってたぞそれ」
『……あと……一時間…』
「長くなってどうすんだよ。とにかく起きろよ」
『むぅ……』
何度かそんなやり取りを終え、ようやく桜は体を起こした。
開ききっていない目を手でゴシゴシ擦るその姿は、猫のようにも見えた。
そしてボーっと静雄の方を見つめた後、
『……おはよーございます。静雄さん』
「…おはよ、桜」
フニャッと笑顔で挨拶の言葉を言ってきたので、静雄も言葉を返しながら彼女の少し乱れた髪を撫でて直した。
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