確かなメロディー(弐)

□第四十八・五話 火種
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日本某所 駅周辺 繁華街





自分の本拠地である新宿を離れた情報屋は、

宛も無く戦場から離れ続けていた。


ただ離れるだけ。


全ての火種である自らは傍観者となるが為に。




……まさか、桜があそこまで早く立ち直るとは…

流石に予想外だったな




携帯電話を片手に歩く彼は、つい先程入った新しい情報の事を考えていた。


頭に思い浮かぶは……あの少女の笑顔


いつも楽しそうであり、

嬉しそうであり、

悲しそうであり、

寂しげである………




最初は予想通りだった。


少女の――桜の裏の感情が近いうちに表に出る事はわかっていた。


彼自身も、それを望んでいた。


自分が思い描く“人間”の中でも特別である彼女が表裏入れ替われば、一体どうなるのだろう、と。


今回の事も、ある意味でその為に起こした。



そして思惑通り、

桜は裏側の自分――“桜”を表に出した。


ここまでは計画通りだった。



だが――思いがけない事が起きた。


予想とは裏腹に、彼女はすぐに自分の裏を受け入れた。


彼自身がこの世で一番嫌う天敵――平和島静雄によって……




ふざけるなよ


今まで壊すことしかできなかったシズちゃんが桜を助けるなんて…


なに善人ぶってんだよ

誰のせいで桜が苦しんだと思ってんだ



……ふざけるなよ……




彼にしては珍しく、苛立ちが燻ぶりあげる。


手にある携帯電話に無意識に力を入れてしまい、ヒビは入らずとも小さな音がした。



“嫉妬”とも似ているその感情は、彼の影の手をさらに早める。


それがものの数分後には、

自業自得として我が身に帰ってくるとも知らずに……



        〜続く〜
 

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