CRAZY DROP

□D
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ハッハッハッ

まるで嫌な夢を見た子供のように、次から次へと零れる涙を止めることはできない


『ナミさん?どうしたのナミさん』


ギシリ、ぐぎっ、キシッ、ギギッ

歩く度に痛々しい音を鳴らす足がどんどんと近付いてくる

真っ白な足

骨が浮き出ていて所々傷痕がある


その足がコツン、逆さまになりながらもはにかみ続けるフランス人形の首を蹴った


ハッハッハッハッハッハッ


息が上手くできない…目の前の化け物が恐ろしくてたまらない

『ナミさん?具合悪い?大丈夫?』

『ヒッ!!』


ゆっくりと伸ばされた腕

勢いよく後ずさる


もう命なんていらないのに

死ぬつもりでここに来たのに

怖いものなんて何もなかったはずなのに


この化け物が私の全てを壊していく


『…可愛いね、ナミさん…』

腰を抜かしジリジリと後ずさる私の前にストンと座って、頬を両手で包んだ


『ね、怖い?俺が、怖い?』


首を縦に動かすことも横に振ることもできない

小刻みに震える私を困ったように見つめた彼は小さな子供に贈るようなキスをした


『かわいそう…こんなに震えてる…ナミさんは死にたくないんだね』


死にたくない?私が?

この子は何を言っているの?私は死ぬためにここに来たというのに

死は私の望みだった

明日があることは私にとって絶望だった

やっと私は終われるの

やっと私の願いは叶うの


怖いわけ、ない…


なのにどうして…こんなに苦しい



 

『ねえ、ナミさ…』

『もうそれくらいにしておきなさいな、ボス』


突然聞こえた女性の声

ちらりと振り返ると入口に黒髪の女性が立っていた

コツンコツンとハイヒールを鳴らして近付いてくる彼女


『あは、ロビンちゃーん』

嬉しそうにニコニコと笑う化け物ににこり、笑いかけた後すぐにこちらへと視線を落とす

涙で濡れたぐしゃぐしゃな私の顔をゆっくりとハンカチで拭いてゆく


『可哀相に…ボスに虐められたのね』

『い…、イジメてなんてないよぉ』


今までの不気味な笑みから一変、あせあせと言い訳を始める彼からはあどけなさが満ちていた

今まで自分に突き刺さっていた彼の視線が他へ散ったことでほんの少しだけ、肩から力が抜ける


その瞬間


『…っナミさん?』

クラリ、世界が歪んだ

同時に自分の身体が傾き倒れていくことに気付く

地面に倒れ込む寸前に女性が支えてくれたようだが…


『疲れちゃったのね、長時間ボスの相手をさせられたのだから無理もないわ…』

『だ、だから意地悪なんてしてないってば〜っ』


こんなところで気を失うなんて…自殺行為(否、別に構わないのだけれど)

だけどこれ以上意識を保っていることは出来そうにない


どこか遠くで殺人鬼たちの声を聞きながら、ゆっくりと意識を手放した





 


end
 

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