めいん

□俺じゃなくても俺だから
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「コイツ、処分するんだよな?」

自分の身体を指差し弥太郎に問い掛ける。

コクリと頷く弥太郎。
「それならさ、んな真剣になんなくていいっつーの」

すぐ死ぬんだから。

前髪なんて、チャチャっと切っちまえばいいのに。

真剣な顔しちゃって。

本当、可愛いヤツ。

そう思って軽く笑ったとき、フッと昔の記憶がやって来て。

力が抜けるような
どうしようも無い
不思議な感覚。
知らなければ良かったのかもしれない。そんな風に少しだけ思ってしまう。


「聡明さん…?」

思わず弥太郎の服を掴み俯く。

「…わりぃ。ちょっと慰めて。色々思い出した」

「…大丈夫ですか」

弥太郎が不安げに俺の頭を撫でる。

「…はは、泣きそう」

弥太郎の服を掴む手に力を入れた。

「大丈夫です。聡明さんは悪くない」

弥太郎が俺の頭を両手で軽く握る。


それからゆっくりと手を俯いている俺の頬に持っていき、

俺の顔を上げた。

同時に弥太郎と目が会い
同時に俺の右目から一粒の滴が落ちた。


弥太郎は一瞬躊躇ってから、かぷりと俺の唇を奪った。

驚いて目を開く。

が、唇は離れない。

「…ふ、ぁ」

「…熱っ」

いつの間にか
さっきまで俺を支えていた弥太郎は
俺に持たれかかっていた。

俺の首に両腕をまわし潤んだ目で俺を見ている。

まだ唇は離れない。


苦しくなってきたのか口を離そうする弥太郎の頭を掴んで逃がさなかった。

「っは…」

「…エロっ」

「なっ//」

ようやく離れた唇と必死に酸素を取り入れる弥太郎。

「顔、赤っ」

「それは、聡明さんがっ…」


「でも自分からしてきたよな?」
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