Our idleness

□だから世界は今日も泣く
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 美佳子さんは父さんの奥さんで、僕の母親になった。
二年前のことだ。
母さんは僕が小学校に上がる前に亡くなっていた。
小さい頃のことでよく覚えていないけれど、優しくて穏やかな人だった気がする。

 堅物教師で口数も少ない父さんは、それからずっと男手一つで僕を育ててくれた。
派手な思い出はないけれど、それでも母さんがいなくて寂しいとか辛いとかと思うことはあまりなかった。
きっと父さんが父さんなりに頑張ってくれたからだと思う。

 そんな父さんだったから、僕は再婚の話を持ち出されたときもすんなり受け入れた。
真面目な父さんの選んだ人だから間違いはないと思ったし、何よりやっと自分の幸せのことを考えてくれたことが嬉しかった。

 でも、初めて美佳子さんに会ったとき、僕は正直迷ってしまった。
彼女は想像以上に若く、スタイルもよく、美人だった。
おそるおそる年齢を聞いたら、なんと僕と一回りしか違わなかった。
あんな堅物の父さんがこんな若くて綺麗な人と、と考えたら、何だか生々しい想像が出来て一瞬だけ気分が悪くなった。
けれど美佳子さんは始終ニコニコしていたし、あの父さんが彼女を気遣う場面も見られたので、たぶん大丈夫なのだろうと思った。

 そして高校一年の冬、僕には十二歳年上の母親が出来た。
 
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