私とかみさま

□第四話 鍵争奪戦
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「始まった」

続さんが、携帯を耳に当てたままそう言った。

私には聞こえなかったが、花村さんからそう伝え聞いたのだろう。混血の二人が、預言書の鍵の争奪戦を始めた、と。鍵を取ってきた方の烙印を消してやる、と続さんが言ったからどちらも死に物狂いで戦っているはず。まあ、花村さんが手助けするから日向さんの方が俄然有利だけども。

ソファーに座り、花村さんの連絡を待つのみの続さんは暇そうだ。双方の暇潰しになればと続さんの斜め後ろに立ち、話しかけようとしたら逆に話しかけられた。

「名前、お前ってあの混血の男の方に、もう情移ってる?」

続さんは何故か不機嫌そうだ。敵に情を移すなんて下僕のくせに使えないと思っているんだろうか。私はすぐに真っ向から否定した。

「いえ移っていませんが……どうして?」

「なんか鍵取りに行く直前にも抱き着かれてたじゃねーか」

「あー……あれはからかってるだけだと思いますよ」

最初は情報収集の為かと思っていたが、だんだんとからかわれているだけのような気がしてきていた。というか私をからかうときの彼がやたら楽しそうなのが癪に触る。おたおたする私を見るのが楽しいんだろうか。でもまあそれももう終わりだ。

彼は今日、殺されるのだから。少し可哀想だけど。

ふぅん、と言葉に含みを持たせて目を私から背ける続さん。

「あの、本当、ですよ」

信じてもらえなかったかと念を押すも、続さんから芳しい反応は得られない。そうこうしているうちに再度続さんの携帯が着信を示した。続さんは携帯を手に取りボタンを押す。

「……そうかよ。こっち的には目的の物さえもらえれば別にどっちが勝ってもいいからな。…………最初からそこまで教えてくれれば早いのに。もったいぶりやがって」

続さんの台詞から鑑みるに、どうやら続さんの話し相手は日向さんのようだ。日向さんは、月宮さんに勝ったのだろうか。ということは、月宮さんは今現在、既に死していることになる。

月宮さん。綺麗な人だったな。私もああいう風に綺麗で格好良い人になれたら、と思わせる人だった。

少ししか一緒に過ごしていないし、情が移らぬよう気をつけていたので大した感慨はないが、少しだけ彼女を思い返した。

「……花村、鍵は!?」

続さんが血相を変えた。どうしたんだろう。もしかして、失敗、したの!?

「……!」

「続さん、一体……!」

食いつくように問いかける。続さんは険しい顔のままだ。ざわざわと胸が騒ぐ。


続さんの首に剣が当てられた。


「「な……――!!!」」

後ろを続さんと同時に振り向くと、そこには月宮さんが。どうして、彼女がこっちに――! それに、電話に夢中になっていたとはいえ、彼女の接近に気付かなかったなんて!

「続さん!」

「名前、動かないで。この純血の首、かっ切るわよ」

呪符を取り出そうと伸ばした手は、月宮さんの冷徹な声に遮られる。

「ソファーの上に手を戻しなさい」

……従うしかない。私は渋々ソファーの上に手を伸せた。

「そうね……まあ、最初から嘘だって知ってたけど」

驚きを隠せない続さんの耳元で、勝ち誇ったように笑みを称える彼女。

最初、から……!? 日向さんが計画をバラしたのだろうか……? そういえば、夕方頃、日向さんは月宮さんに話があると言っていたが――まさか、あの時に。

「茶番はお互い様よね、嘘分かるのよ」

そういえば、初めて月宮さんに会った時にもそんなことを言っていた。あれは単純に私が嘘を吐くのが下手だったから気付かれたのだと思っていたけど……違うのだろうか。もしかして言葉通りの意味で、嘘が分かると言うんだろうか。まさかそんな。でも彼女は人間ではなく吸血鬼だ、そうだったとしてもそれほど可笑しくはない。

「次に嘘つく時はもっと猜疑心のない相手にバレないようについてね。例えば、その子とか」

「!」

「……じゃ、さよなら純血天使くん、と、純粋な人間ちゃん?」

月宮さんはソファーの上の預言書を手に取り、窓から颯爽と出て行く。

「まっ……!」

呪符を使って攻撃しようと思った、がソファーから伸びる血が、ガッチリと私の両手とソファーとを繋ぎ止めている。これでは呪符を取り出せない。これが狙いで、ソファーの上に手をおかせたんだ……!

「……っ!」


その予言書は……その予言書は! 他のだれでもない、続さんの、大切なものなのに――ッ!
力任せに血の拘束を解こうとするも、まるで、まるで切れる様子がない……!

舌打ちが聞こえ、続さんの方を見る。彼もまた壁から伸びる血によって拘束されていた。

「くそっ! 混血ども!!」

続さんは憎々し気に叫んだ。



拘束をなんとか解き、月宮さんを追って私と続さんは外に出て来ていた。

「奴等の現在位置はどこだ? 追跡はしてんだろ」

「ちょっと待ってください。探知! ……位置情報確認。あっちです!」

追跡は拘束を解いた後に呪符を使ってやったのだが、まだ近くに居たので、なんとか間に合ったようだ。私は月宮さん達がいる方向を指差す。

「っし。行くぞ、名前!」

「はい!」

神の遺産は、神の力が満ちるまで使用不可だ。だから神の力が満ちるまでがタイムリミット。
指差した方へ走り出す続さんを追いかけた。



低い段差の階段が続いているところまでやって来た。もうすぐで月宮さん達がいるところまで行ける。ちなみに私は花村さんに携帯で連絡をしていた。彼にも追い付いてもらって共闘してもらおうというわけだ。

「もう預言書を開いたみたいです」

「さすがハイエナ。嫌なくらい行動が早いですね」

「はい。だからすみませんが花村さんも急いでこちらに向かってくださいね」

とりあえず時間がないので行きながら話そうとしたところ、続さんと私、二人とも結界にかかってしまった。

「っ、結界……!?」

これでは先に進めない。私は呪符を取り出す。

「しかも高度なやつな。ほんっと、混血のくせに生意気!」

続さんは言いながら鞘から刀を抜いた。

「俺を誰だと思ってる。『解除しろ』」

あっさりと彼は刀で結界を解いてしまった。こんな上等呪術、そんなにあっさりと解けるものではないのに。やっぱり続さんはすごい。さすがだ。

「『壊』! ……っの!」

私も頑張って解こうとするが、やはり続さんのようにはいかない。それでもムキになって解こうと奮闘すると、続さんが刀を横に凪いで私がかかっていた結界を破壊した。

「このくらい破壊出来るようになれ!」

「あ……すみません」

足手まとい。そんな言葉が浮かんで落ち込む。続さんの役に立てるようにもっと、もっともっともっと頑張らないといけないな……。

「急ぐぞ! 俺の後ろを着いてこい!」

続さんが結界を解いていく後ろを着いていけば私は結界にかからない。それが一番効率が良いだろう。

「はい!」

返事をし、続さんと共に月宮さん達のところへ走り出した。


拘束をなんとか解き、月宮さんを追って私と続さんは外に出ていた。

「奴等の現在位置はどこだ? 追跡はしてんだろ」

「ちょっと待ってください。探知! ……位置情報確認。あっちです!」

追跡は拘束を解いた後に呪符を使ってやったのだが、まだ近くに居たので、なんとか間に合ったようだ。私は月宮さん達がいる方向を指差す。

「っし。行くぞ、名前!」

「はい!」

神の遺産は、神の力が満ちるまで使用不可だ。だから神の力が満ちるまでがタイムリミット。
指差した方へ走り出す続さんを追いかけた。



低い段差の階段が続いているところまでやって来た。もうすぐで月宮さん達がいるところまで行ける。ちなみに私は花村さんに携帯で連絡をしていた。彼にも追い付いてもらって共闘してもらおうというわけだ。

「もう預言書を開いたみたいです」

「さすがハイエナ。嫌なくらい行動が早いですね」

「はい。だからすみませんが花村さんも急いでこちらに向かってくださいね」

とりあえず時間がないので行きながら話そうとしたところ、続さんと私、二人とも結界にかかってしまった。

「っ、結界……!?」

これでは先に進めない。私は呪符を取り出す。

「しかも高度なやつな。ほんっと、混血のくせに生意気!」

続さんは言いながら鞘から刀を抜いた。

「俺を誰だと思ってる。『解除しろ』」

あっさりと彼は刀で結界を解いてしまった。こんな上等呪術、そんなにあっさりと解けるものではないのに。やっぱり続さんはすごい。さすがだ。

「壊! ……っの!」

私も頑張って解こうとするが、やはり続さんのようにはいかない。それでもムキになって解こうと奮闘すると、続さんが刀を横に凪いで私がかかっていた結界を破壊した。

「このくらい破壊出来るようになれ!」

「あ……すみません」

足手まとい。そんな言葉が浮かんで落ち込む。続さんの役に立てるようにもっと、もっともっともっと頑張らないといけないな……。

「急ぐぞ! 俺の後ろを着いてこい!」

続さんが結界を解いていく後ろを着いていけば私は結界にかからない。それが一番効率が良いだろう。

「はい!」

返事をし、続さんと共に月宮さん達のところへ走り出した。
 

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