第三部
□V-7.王の証を探す件
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鉛色の空から漏れる光が、窓辺に差し込み、控えめに朝を告げる。
腕の中に眠るリューを、ユプシロンは ぼんやりと眺めた。
その寝息は規則正しい。
その瞼に涙の腫れはない。
何て素晴らしい朝だ。
まだ彼女が塔に暮らす前、夜中の様子見で、エータの代わりに、
寝ぼけた彼女に殴られた記憶が、懐かしく甦る。
やわらかな甘栗色の髪を撫でる。
神々に、と求められ、独りになるのは嫌だと、泣いていた従妹。
本当は、もっとシンプルな理由で一人になる者もいる。
そして、出会いながら、失いながら、生きていくのだ。
各々の長さで。
その時間を如何に思うか。
己の拠り所を如何に保つか。
古き書はその知恵を物語る。
我らに残されし この肉体。
それに刻まれた設計図。
その情報が、ルーツを語る。
僕らが、僕ら自身が、紛れもなく両親からの贈り物だと。