第三部

□V-7.王の証を探す件
1ページ/31ページ




 鉛色の空から漏れる光が、窓辺に差し込み、控えめに朝を告げる。
腕の中に眠るリューを、ユプシロンは ぼんやりと眺めた。

その寝息は規則正しい。
その瞼に涙の腫れはない。

何て素晴らしい朝だ。

まだ彼女が塔に暮らす前、夜中の様子見で、エータの代わりに、
寝ぼけた彼女に殴られた記憶が、懐かしく甦る。

やわらかな甘栗色の髪を撫でる。

神々に、と求められ、独りになるのは嫌だと、泣いていた従妹。

本当は、もっとシンプルな理由で一人になる者もいる。
そして、出会いながら、失いながら、生きていくのだ。
各々の長さで。

その時間を如何に思うか。
己の拠り所を如何に保つか。

古き書はその知恵を物語る。
我らに残されし この肉体。
それに刻まれた設計図。
その情報が、ルーツを語る。
僕らが、僕ら自身が、紛れもなく両親からの贈り物だと。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ