第三部

□Ex.α 花嫁の夢
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人影に、立ち止まり、問いかける。
その笑顔を、その美しさを、喜ぶ。
無邪気で、愚かな私。
彼が何者か、考えもしなかった…。

 そのひと…エータと、遊ぶようになってから、光る存在…妖精たちがたくさん現われるようになった。
不思議だったけれど、彼らと遊ぶのが好きだったから、
エータと遊ぶのはもっと好きだったから、
だから、そんなことは何でもないと、思っていた。
ただ好きだったから、それ以外は何も必要がないと。


 エータと出会ってからしばらく経った頃、おば様と一緒に、ユプシロンが、来た。
次期当主という肩書きを持つ彼は、社交的な笑顔で歩み寄り、手を差し出してきた。
楽しいひらめきが起こり、その手を、強く握りる。
驚く彼を野に連れていった。

 いつものように、現れたエータに、ユプシロンを紹介し、三人で思い切り遊んだ。
世界が喜びと輝きに満ちていた。けれど体は徐々に疲れを溜める。
休みがてら、他愛ない、花の遊びを繰り返す。
休んでいるうちに、ユプシロンは寝息をたてていた。
贈った花冠のお返しに、エータから花の指輪を贈られる。その意味を考えもせずに、受け取る。
夜の戸張とばりが降り、花の色が変わる頃、いつものように、エータが帰る。
どこかへ。
目覚めたユプシロンから、エータのことを訊かれたけれど、答えられなかった。
それでも知ろうとしなかった、愚かしさ。


           
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