第三部

□V-4.カーラの森の件
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風のさやぎ
葉の擦れる
永遠を示す森
淡きものいこう
この地こそ 運命の
羽根を受けしところ
われを 迎え来る 羽音




 いつも酒場で歌うような恋歌でも、テンポのいい陽気な曲でもなく。
ゆるやかな旋律を歌い上げる。
一同は寒さも忘れ聴き惚れた。
カイが瞳を開けると、その周囲にワッと多くの人影が現われた。
その中の一人がカイを抱き締め、顔を確かめるように頬に触れる。
アシェスがわずかに眉をひそめた。
「長らく<中継>がないと思ったら、生身で里帰りですか…!」
「グラフィアス!まだ冬眠してなくてよかったわ」
輝く笑顔で挨拶する。
「ええ。今年は少し訳ありで」
「ワケ?」
「ええ。私たちの仲間がひとり、人間と暮らしているのですが、
人間が出かけたきり戻らなくて。
その人間が帰ってきて一言別れを告げるまでは、と言い張るので。
ひとり保証もなく残して眠る訳にいきませんし。
…ところで、珍しい方たちと一緒ですね。…彼が件くだんの琴弾きですか?」
アシェスを示しての確認に、カイはうなずく。
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