第三部

□V-4.カーラの森の件
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 一行は徒歩という地道な旅の末、カーラの森に隣接する古都アステリオンへ到着した。
古い館が多い、落ち着いた…どこか活気が欠けた街並みだ。
「さっむーい…」
 リューがオオドリに抱きつきながら呟いた。
「もう冬が近いな…」
白い吐息と共に洩れたオオドリの呟きに、カイがハッと指折り数え、日の高さを確認する。
中天を過ぎたあたり。日没まで あと四時間はあるだろう。
「すぐ森に行こう。日没前には戻れるから」
一同をせかすカイ。
「そんなに急ぐんですか?明日にした方が…」
「早くしないと、そろそろ精霊みんなが冬眠しちゃうのーっ!」
提言するアシェスに、苛立つようにカイが叫んだ。

 カイに押し切られる形で森に向かった一行。
本当に街の近くで、二十分程で森の入口に着いた。
そこからまたカイを先頭にして五分ほど進むと、唐突に広場が現われた。
「なっ!?」
イータと入った林と同じじゃないか!
オオドリが心の中で叫ぶ。
しかしカイはオオドリの驚嘆を、唐突な広場の存在に驚いただけと流した。
「おっし。まだみんなは寝てない訳ね。良かったー。
はるばる戻ってきて誰もいなかったら骨折り損じゃないー」
一人で合点がてんして気合を入れるカイ。
 通常はこの広場に来るのに一時間はかかるが、カイは精霊が起きていれば すぐここまで来れるのだ。
どういう仕組かは知らないが。
「じゃ、ちょっと失礼」
一言断わると目を閉じ、歌い始めた。
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