第三部

□V-3.娘二人の戯れる件
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 昼は歩けるだけ歩き、夜は吟遊詩人の二人は宿で歌を披露しながら四人の旅は続いた。
村々をつなぐ道では、農作物の刈り取とられ、黄金にうねっていた畑は焦げ茶の素肌を見せる。
町外れにさしかかると、道は煉瓦敷きへ変わった。
吹き渡る風に含まれる香りも、どこか違ってくる。
オオドリが、ふと何かに気付いたように辺りを見回し、首を傾げる。そして不意にカイに顔を寄せた。
「「「?!!」」」
一同が大いに困惑する。
「…あ、すまない…。花の匂いがしたものだから、どこからしてるのかと」
「あ、ポプリかな?夏に、森に咲いてた花を乾燥させたの」
ポケットから小さな袋を取り出すと、より匂いが強まった。
「そうか。…森で、花の群生が近いときと同じような匂いがしたのに、花が見当たらないから、
不思議だったのだ」
覆面越しにもオオドリの表情が和んだのが分かる。
「だが、失礼したな」
好奇心に負けた非礼をカイとアシェスに詫びる。
「私もたまにあるから気にしないで?
好奇心ってたまに自分でもびっくりするようなことさせるよね」
怒るどころか、オオドリがそんな行動を取ったことを楽しんで笑った。
少し先に町の案内板を見つけて、アシェスを引っ張ってそちらへ走っていく。
「…あーちゃんも何か作ろうかなー…」
カイの後ろ姿を眺めて、ぽそりとリューが小さく呟く。
「香り袋か?まだいらないんじゃないか?」
「がーん!それってお子さまってこと?!」
「………いや、そうではない」
確かにお子さまに見えるが。それは決して口にしない。
「ああいう花の香りが続くと、クラクラしそうな気がする」

ソレハかいニ悩殺サレカケテルッテコトデスカ?!
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