第三部

□V-2.呪われた身を告げる件
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「行き先が決まってるなら乗合馬車にしよう?」
 鶴カイの一声で、一同は馬車に揺られていた。
乗合馬車と言ってもそう大きくはない。十人も乗れば満員といった程度だ。
言い出しのカイは外を眺め、楽しそうに鼻歌を歌っている。
だが、残りの面々は、乗り物酔いにうめいていた。
「大丈夫ですか?アール」
他に乗客のないのを幸いと、オオドリの膝に頭を預け、横になり始めたリューに、アシェスが声をかけた。
「…馬車って、こんなに揺れるもんだったっけ?」
「さあ。昔乗ったものはこれ程は揺れなかったが」
「同じくですが……」とはアシェス。
ひたすら元気がない。喋るのも、ようやくといった様子で、思わず、一人元気なカイに目をやった。
視線に気付いたカイが一同を振り返る。
「ん?元気ないね。さては みんな育ちがいい?私みたいな一般庶民はこれが普通だけど。」
「…馬とかも揺れるんでしょう?オード」
「そうだが…これは思いがけない揺れ方をする…」
車輪が小石を跳ねたり、くぼみに落ち込んだり、幌の中に居る分、予測しがたさが苦痛を増す。
「…これに乗り続けるより、地道に徒歩で行きたい人ー?」
問いかけに、揃って挙手。その深刻な顔つきに、カイは思わず吹き出すが、
「笑い事じゃないよう!」
と真っ青な顔でリューが力無く抗議した。

 

 次の停留所で降りると、一同は大きく深呼吸した。
馬車を降りてなおフラフラとしている面々に、カイはふと問いかける。
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