第三部

□V-1.吟遊詩人の加わる件
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リューが目を覚ました。
日は完全に姿を現しているが、まだ寝足りないのか、リューはベッドにちょこん、と座ったまま、
あらぬ方向を見ている。
やがて、オオドリが部屋にいないことに気付くとひどく慌てて部屋を飛び出した。
「キャッ!」
「あ!ごめんなさい」
 急に扉を開いたため、ぶつかりそうになった。
相手は昨日の吟遊詩人だった。
「ずいぶん急いでるのね」
寝起きのままのリューに驚く。
「オオドリ君が…」
「連れの人? あの人?」
階下の休憩所に座るオオドリを指差した。
「そう。いた…。良かった」
ほーっと安堵の溜息をつくリュー。
その様子を見て詩人は優しく笑った。
「じゃあ、安心して身支度できるわね」
ちょいちょい、とよだれの跡を指差して知らされ、リューは赤面し、
挨拶もそこそこに部屋に戻った。



「おはようございます」
「! ああ、どうも、おはよう」
吟遊詩人に突然声をかけられ、オオドリは戸惑いながらも挨拶を返す。
特に用という訳ではないようで、すぐカウンターの店員にも挨拶し、何かを頼んだようだった。
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